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女 の





ふわふわとした浮遊感。
ココはどこだろうと目を彷徨わす。
真っ暗な世界、目には何も映らない。
心細さが胸を支配し、ふと大事なことを思い出す。

「お母さん?尾沢君?」

キョロキョロと辺りを見回すが、私の周りには誰もいない。

「どこ?ココはどこなの?」

そして、嫌な予感が頭を過ぎる。

「‥‥私、‥死んだの‥‥?」

そうとしか思えなかった。だって、ココは暗闇の世界。光は見えない。

――― 『お前はまだ死んでないよ』

「 !? 」

――― 『けど、もうそれも時間の問題かもしれないな』

突然、脳に直接語りかけてくる存在がいた。その存在に驚き、危うく腰を抜かしそうになる。

「誰!?」

――― 『この世界の住人とでも言っておこうか』

あくまでも姿は見えない。ただ、凛とした声が頭の中に直接入り込んでくるだけ。

「時間の問題ってどういうこと?ここは何処なの?」

――― 『死んでもいない。生きてもいない。中途半端なやつらが迷い込んでくるところだよ』

その言葉を聞いてハッとする。私は、まだ死んでいない。なら、手術は無事に成功したということだろうか ?

――― 『おい。勘違いするな?このままココにいれば、お前は死ぬ』

「なっ!?」

――― 『生きたいか?一度は死を覚悟したお前が?』

グッと唇を噛み締める。そうなのだ、私は一度死ぬことを覚悟した。生きるという意志を忘れていた。
けれど、今は違う。尾沢のおかげで、私は生きる意志を持った。約束もした。何があっても破りたくない約 束を‥‥

「生きたい。死を覚悟したのは過去の話よ」

――― 『なら、元いた場所に帰ってみせろ』

「帰るって、どうやって‥‥」

――― 『何故自分が帰りたいか?よく考えろ。諦めるな。諦めれば、そこで終わりだ』

そして、プツリと途絶えてしまった声。訳がわからないまま、私はこの暗闇の世界に放り出された。
どうすればいい?ここには、誰も助けてくれる人がいない。私に生きる希望をくれた人がいない。

「帰りたい。早く、会いたいよっ‥‥」

シンと静まり返ったこの場所に、私の声はよく響いた。その声に、返事をしてくれる人は誰もいなくて 泣き たくなった。


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