BACK | NEXT | TOP
僕 と 彼 女 の 約 束
4
ふわふわとした浮遊感。
ココはどこだろうと目を彷徨わす。
真っ暗な世界、目には何も映らない。
心細さが胸を支配し、ふと大事なことを思い出す。
「お母さん?尾沢君?」
キョロキョロと辺りを見回すが、私の周りには誰もいない。
「どこ?ココはどこなの?」
そして、嫌な予感が頭を過ぎる。
「‥‥私、‥死んだの‥‥?」
そうとしか思えなかった。だって、ココは暗闇の世界。光は見えない。
――― 『お前はまだ死んでないよ』
「 !? 」
――― 『けど、もうそれも時間の問題かもしれないな』
突然、脳に直接語りかけてくる存在がいた。その存在に驚き、危うく腰を抜かしそうになる。
「誰!?」
――― 『この世界の住人とでも言っておこうか』
あくまでも姿は見えない。ただ、凛とした声が頭の中に直接入り込んでくるだけ。
「時間の問題ってどういうこと?ここは何処なの?」
――― 『死んでもいない。生きてもいない。中途半端なやつらが迷い込んでくるところだよ』
その言葉を聞いてハッとする。私は、まだ死んでいない。なら、手術は無事に成功したということだろうか
?
――― 『おい。勘違いするな?このままココにいれば、お前は死ぬ』
「なっ!?」
――― 『生きたいか?一度は死を覚悟したお前が?』
グッと唇を噛み締める。そうなのだ、私は一度死ぬことを覚悟した。生きるという意志を忘れていた。
けれど、今は違う。尾沢のおかげで、私は生きる意志を持った。約束もした。何があっても破りたくない約
束を‥‥
「生きたい。死を覚悟したのは過去の話よ」
――― 『なら、元いた場所に帰ってみせろ』
「帰るって、どうやって‥‥」
――― 『何故自分が帰りたいか?よく考えろ。諦めるな。諦めれば、そこで終わりだ』
そして、プツリと途絶えてしまった声。訳がわからないまま、私はこの暗闇の世界に放り出された。
どうすればいい?ここには、誰も助けてくれる人がいない。私に生きる希望をくれた人がいない。
「帰りたい。早く、会いたいよっ‥‥」
シンと静まり返ったこの場所に、私の声はよく響いた。その声に、返事をしてくれる人は誰もいなくて 泣き
たくなった。
BACK | NEXT | TOP