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女 の





いよいよ練習試合当日。
気持ちいいぐらいに晴れている試合日和だ。とかなんとか思いながら朝起きて、身支度をしていた。

「秋広〜、朝ご飯出来たわよ」
「今行く!!」

階下からかかった呼び声に、慌てて返事を返して簡単に必要な荷物を鞄の中に詰めた。それから、準備の出 来た鞄を肩に掛けて階段を下りていく。

「おはよう」
「おはよう。今日試合の日でしょ?良かったわね晴れてて」
「うん」

母さんが用意してくれた朝食をしっかり腹のなかに入れて、試合に備えていた。

「そろそろ行ってくるわ」
「そう?気をつけてね」
「行ってきます」

玄関で母さんにそう声をかけて外に出た。

「よしっ」

誰に言うわけでもなく、ただ気合いを入れるためだけに声を発して俺は学校まで走っていった。


********


「っはよ」
「おっす」

学校に着くともう大体の人が集まっていた。その中に自分も紛れながら走ってきて少しあがった息を整える 。

「走ってきたのか?」
「ああ。ちょっと体馴らしとこうと思って」
「ふ〜ん。やる気だな」
「そりゃな」

ニッと友人と二人で顔を見合わせて笑いあう。この瞬間が結構俺は好きだったりする。落ち着くっていうか 不安要素が軽くなるというか‥‥不思議なものなんだ。

「頑張ろうぜ」
「言われなくても」

それからしばらくして、対戦校がグラウンドにやってきた。各チームの顧問の先生が挨拶を交わしている間 に、俺たちはアップを終わらそうとしていた。

「じゃあ、こっち集まって」

そう声がかかって、俺たちは一斉に走り出した。

今日は、負けられないんだ。絶対に。

そんな思いを胸に秘め、俺は敵チームの前に立った。さぁ、試合の始まりだ。


********


結構接戦していた俺たち。たぶん、去年やっていたら負けていただろうと思う。けれど、今年はそうじゃな い。そんな思いを抱えていたのは、どうやら俺だけではなかったらしく 後半は猛攻撃を仕掛けて勢いのまま に勝利をおさめてしまった。

「ありがとうございましたっ!!」

試合終了後に気持ちよく挨拶をして、相手チームの選手と握手した。そんなときだった、俺のところまで一 通の手紙を持って小さな男の子がやってきたのは‥‥。

「お兄ちゃん」
「えっ?」

服を下からつんつんと引っ張られて、何だと思って視線を下げる。

「これ、渡してって頼まれた」

差し出された白い封筒。反射的に受け取って、まじまじとその封筒を眺めていた。

「何だよ、ラブレターかぁ?」

俺の周りにわらわらと集まってきたチームメイトたち。そいつらを無視して封を切って中に入った手紙を取 り出してみる。

「え‥‥」

中に書かれた文を見て唖然とする。そんな俺を不思議に思った友人が手紙を除き見て声に出す。

「約束の場所で待ってる?何だコレ」
「仲尾だ‥‥」
「は?っておい、秋広!!」

気がついたら走っていた。グラウンドでどこに行くんだと叫ぶ仲間達の声など無視して、ただひたすら走り つづけていた。目指す場所は、ただ一つ。俺は このときが来るのをどれだけ待ち望んだだろうか。


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