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わがままな姫君



『わがままな宣告』(5)


「へぇ〜。それがあんたの本性か。どうりで、胡散臭い笑顔だと思った」
「何のことかしら?」

皇がそう口にしながら一歩一歩姫乃に近づいてくる。
それに気付きながらも、姫乃は平常心を装ってしらばっくれる。けれど、そう簡単に皇は騙されない。皇は 実際にその耳で姫乃が発した言葉を聞いてしまったのだから。

「いくら笑顔を作ったって無駄だけど?だって俺、今しっかり見ちゃったし」
「一体何を見たっていうのかしら?」
「あんたが俺を惚れさせるとか何とか」

菜穂子はその様子をただじっと黙って見ていた。姫乃の本性は確実にばれている。けれど、姫乃はしらばっ くれようとしている。だが、姫乃もしらを切るのにも限界があることを感じていた。

「ねぇ、もう無理よ。白状しちゃったら?」

小声でそう菜穂子は姫乃に問い掛ける。

「‥‥そうね。分かったわ」
「え‥?」

自分で言っといてなんだが、まさか姫乃がこんなにも簡単に自分の本性をばらすという行為を受け入れると は思っていなかった。
姫乃は皇をキッと睨みつけて偉そうに口を開く。

「ふん。バレてるのならしょうがいわよねっ。そうよ、ええそうよ!!確かに私はあなたを惚れさせる宣言 したわっ。でも、それが何?私何か悪いことしてるかしらっ!?」

姫乃の豹変振りに思わず皇は呆気に取られた。
それに気付いた姫乃は眉根を不機嫌そうに寄せた。

「何よ。何か文句でもあるの?」
「いや、そこまで開き直れるあんたを尊敬したっていうか」
「私の本性を知られてるのに作る必要はまったく無いでしょう?開き直るしかないじゃない。ついでにそう ね、今もう一度言っておくわっ」

そう高々に声を張り上げて姫乃は言う。人差し指をビシリと皇に突きつけながら。

「浅川 皇!!私はね、欲しいと思ったものは手に入れないと気がすまないのっ。今までだって、欲しかった ものはすべて手に入れてきたわ。もちろん男もね!!よって、あなたも必ず私のものにしてみせるわっ。覚 悟しなさい!!」

すべてを言い終わった後、興奮のあまり息が乱れている姫乃。
その様子を本気で面白がっているように見える皇は、この1日で一度も見たことが無かった笑顔を見せた。

「楽しみにしてるよ」
「‥っ。わ、私の虜になったあとで後悔したって遅いんですからね!!」

不覚にも姫乃は皇の笑顔に目を奪われてしまって、一瞬言葉に詰まってしまったのだ。
それから、皇は何事も無かったかのような顔をして走り去っていってしまい、姫乃と菜穂子だけがそこに取 り残されてしまった。

「ひ、姫乃?」

俯いて黙り込んでしまっている姫乃を心配して、恐る恐る菜穂子は声を掛ける。
しばらくそのままの状態が続いていたが、姫乃がバッと顔をあげて絶叫した。

「見てなさいっ!!浅川 皇ーーーっっ!!」

幸いここには誰もいない。いくら姫乃が叫んでも、その光景を見ていない人はその声が姫乃のものだとは思 うまい。
例え姫乃が叫んでいたと疑われても、『姫乃さんが叫ぶわけないだろう』で済んでしまうのだ。
その時、菜穂子はしみじみ思う。
皆、騙されてるよ。と‥‥


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