側にいることが当たり前だった。 当たり前すぎて気付けないことがあるということに、 少女は気付くことが出来なかった。 『 死 』というものを理解したつもりでいた。 「何でっ。どうしてっ」 ひとり泣き崩れた少女の側には誰もいない。 テレビの賑やかな音だけが部屋の中で響いていた。 「悲しんだりなんかするもんか。自業自得だ」 その言葉とは裏腹に、表情は苦しげに歪められる。 時は流れ、季節は変わる。 そこで出会った少年は少女に問うた。 「なら、あんたは一体何が出来たっていうんだ?」 失って初めて気付いた想いは、少女の中で燻り続ける。 「もっともっと話したいことがあったのにっ」 雪の舞い散る中で気付いた想い。 「俺はあんたを知ってたよ」 今にも消えてなくなってしまいそうな少女に、少年はそう静かに告げる。 「私はっ、‥誰かの支えになってあげたかった!!」 悲しみの涙を超えて、辛い現実を乗り越えて‥‥ ただ前を向いて必死に『 生 』にしがみついていた。 「忘れたくないのにっ、どんどん顔が薄れていくのっ」 膨大な情報が流れ込んでくる毎日に苛立ちを覚えた。 「一番過去に縛られているのは、‥‥私だ」 あの日、心に降り積もった冷たい雪を‥‥ 冷め切ってしまった感情を‥‥ 流せなくなってしまった涙を‥‥ 「哀しいけど‥‥綺麗だと思ったんだよ」 少年は少女の目を真っ直ぐに見つめてそう告げる。 いつか溶ける日は来るのだろうか? 少女の中に降り積もった雪が‥‥‥ 『心の雪が溶けるまで』 今冬連載開始予定。 この物語は、実話を基にしたフィクションです。 2005/09/02 TOP | NOVEL |