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雪降る街の上で

(2)



瀬能 直志、そいつは私の幼馴染。幼いときからずっと一緒にいて、何処に行くにも、何をするにも一緒だった。それが当たり前すぎて、ずっとそんな関係が続くと 幼い頃の私は、馬鹿みたいに信じていた。けど、現実はそんなに甘くない。成長するにつれて、少しずつ でも確実に、私達は離れていった。相変わらず、今でも仲はいいけれど、ただ仲がいいだけ。心の距離が、離れてしまった。昔は、もっと通じ合っていたはずだった。でも、今は‥‥。

いつだっただろう?私があいつを好きだと気付いたのは。多分、中学生のとき、初めてあいつに彼女が出来た時だろう。彼女が出来たんだ。いつもと変わりないあいつの笑顔から、そんな言葉が発せられた。まさか、そんなことを言われるとは思っていなくて、頭を何かでガツンと殴られたような衝撃を受けた。その時、初めて気付いたんだ。

私は、直志が好きなんだ。

でも、気付くのが遅かった。彼女が出来たあいつに、今更この想いを伝える勇気は無かった。ただ、自分自身初めて感じるこの狂おしいほど恋しい気持ちに、戸惑っているだけだった。その後、結局 あいつは彼女と別れてしまったけれど、告白しようかどうか悩んでいるうちに もう別の人があいつの隣に居座っていた。

「よう、美弥子。お前、今年のクリスマスも一人寂しく過ごすのか?」

ボンヤリと考え事をしながら廊下を歩いていると、忘れたくても忘れられない声に呼び止められた。ハッとして、振り返るとそこにはあいつと綺麗な彼女がいた。その二人を見て、振り返るんじゃなかったと後悔した。

「どういう意味よ」
「どうもこうもねぇよ。お前の浮いた話今年も聞かないからさ、一応心配してやってんだよ。幼馴染としてな」

直志は知らないのだろう。好きな人に、こういうことを心配されるのがどれほどつらいことなのか。好きな人が彼女と一緒のときに、何でもないふうに自然に話しかけてくることがどれほど残酷なことなのか。だから、思ってもないことを私は自然に口にしていた。

「心配してもらわなくても結構よ」
「えっ?」
「私だって、相手に不自由してるわけじゃないわ。ただ、誰とも付き合う気になれなかっただけ。でも、そろそろ彼氏が欲しいなぁって思い始めたとこだから、真剣に考えてみるつもり」
「真剣にって‥‥」
「私、今度イブの日にある合コンに行くの。そこで、いい人がいたら考えてみる。美紀がいうには、結構かっこいい人いるみたいだし」

そこまで一気に捲し立てて、私はあいつに背を向けて走り出した。もうあの場所にはいたくなかった。あの二人を見ていたくなかった。こんなにもあいつのことが好きなのに、どうしてこの想いは届かないのか。好きになんかならなければ良かった。好きだということに、気付かなければよかった。

「おいっ!!美弥子っ!!」

遠くのほうで、私の名前を呼ぶあいつの声が聞こえた気がしたけど、それは私の都合のいい耳が聴かせた幻聴だったのかもしれない。それほどまでに、私は、あいつのことが好きだった。でも、そろそろ潮時なのかもしれない。新しい恋に目を向けるべきなのかもしれない。

「美紀、合コンのことなんだけど‥‥」

教室に戻って、席に着いている美紀のところまで行き話を振った。すると美紀は、不思議そうな顔をして 合コン?と呟いた。それにコクリと頷いて、私は続けた。

「やっぱり、私 行っちゃだめかな?」
「えっ‥」
「ダメかな?もう他の人見つかった?」
「ううん、いいんだけど。本当にいいの?美弥子」

もう後戻りは出来ないその選択を私は選ぶ決心をする。あいつのことは、もう忘れよう。私の想いは、あいつに届くことはない。

「うん、もういいんだ」


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