モクジ

● 私の好きな人  ●

たった一人の好きな人。
あなたには、死ぬほど好きな人がいますか?


「達也!!何してるの?」
「本読んでんだよ。見てわかんねぇのか?」
一度私に向けられた視線は、すぐに手にもっている読みかけの本に落とされる。
「その本おもしろいの?」
「・・・・」
「どんな本なの?」
「・・・・」
「私にも読める?」
「・・・うるさいから向こう行ってろ」
達也に軽く睨まれて、しぶしぶ私はその場から離れた。
「っと、そうだ!!ねぇ達也!!って、アレ?」
アレ?って思った頃にはもう遅かった。
たまたま足元に落ちていた紙をふんだ私は、見事にひっくり返ってしまった。
「加緒里!!」
いつもと違う、達也のあせった声を聞きながら、私の意識は遠のいていった。

**********

「ちょっと頭打ったみたいだけど、このまま安静にしてれば大丈夫よ」
「そうですか」
「じゃあ、あと頼めるかしら?ちょっと私、今から職員会議があるから」
「はい。分かりました」
近くで誰かの話し声が聞こえてきて、私の目は少しずつ覚めてきた。
「ったく。ビックリさせんなよな」
誰かが部屋から出て行ったあとに聞こえてきた声に、ハッとした私は飛び起きた。
「達也!?っててて」
急に起き上がると、すごく頭が痛んだ。
「おまっ。起きてたのか!?」
「えっ?うん。今起きたとこ」
「あっそ。まぁいいや、目ぇ覚めたんなら」
そう言って、達也は一歩後ろに下がった。
「帰っちゃうの!?っっ」
「加緒里!!急に起き上がんな!!」
「だって達也が帰ろうとするから・・」
「誰も帰るなんて言ってないだろ?それよりお前はおとなしく寝てろ。もう心配かけんな」
「う〜ゴメンナサイ」
「じゃあ、もう少し寝てろ。荷物取ってきてやるから」
「うん」

達也は私の好きな人。大好きな人。
友達には、あんな奴どこがいいの?と言われるけど、私には達也よりいい人なんて、世界中のどこを探しても見つかりはしない。
きつい言葉を口にしても、その言葉の中にあたたかさを感じるから好き。
心配してないフリをして、実は誰よりも心配性な達也が好き。


これが私の好きな人。
世界で一番好きな人。
モクジ
Copyright (c) 2004 huuka All rights reserved.
 


100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!