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ただ君の幸せを‥‥。

1.変わりない日常



「和樹〜?何してるの?帰らないの〜?」

身長は低めの156cm。髪の長さはちょうど肩につく位で、少し白めの肌。
そして、大きく くるくる とした二つの瞳は、教室の入り口から真っ直ぐに俺を見つめていた。

一般的にたぶんかわいい部類に入るであろうその女の子は、羽田 留美。俺の彼女。

「俺 今日 日直だったんだよ。もうすぐ終わると思うからさ、その辺で待っててよ」

そう言いながら、証拠を見せ付けるように書きかけの日誌を手に持ち、軽く左右に振ってみる。

「へぇ〜。そうなの〜、そういえば 私‥‥、日誌書いたことないなぁ」

俺以外に 誰もいない教室へ留美が入ってきた。
そして、いつものように俺の前の奴の席に座って、後ろを向く。

「‥‥‥お前、日直したことあるのか?」

俺が呆れ顔でそう聞くと、少しムッとした表情になりながら俺の質問に答える。

「したことぐらいあるよ!!でも、日誌は書いたことないんだもん。いつも 宮本が書いてくれてるから‥‥‥」
「お前がさぼるから 嫌々 書いてくれてるんじゃねぇの?」
「違うよ!!役割分担してるの!!その方が効率いいでしょ?」
「―――‥‥俺もしてるけど?」
「‥‥‥とっとにかく!日誌書くのはずっと宮本の仕事だって決めてるの!!」
「ふ〜ん。まぁ、どうでもいいけど」

まだ 目の前で何かゴチャゴチャ言ってるが、留美が落ち着くまで とりあえず今は無視だ。
先にさっさと仕事を終わらせてしまおう。


「ねぇ 和樹?来年はさぁ、いよいよ高校生活最後の年になるんだよね」

やっと落ち着いてきた留美が、窓の外を眺めながらそんなことを言った。

「あぁ、そうだな。もう俺達も 三年になるんだな」
「うん」

外を眺めている留美の横顔は、少し切なげに見えた。

「和樹ってさぁ、大学何処行くの?」
「ん〜?近くの美術大学かな?留美も同じだろ?」
「ウソ!?和樹も一緒なの!?よかったぁ〜。じゃぁ 離れないで済むんだ」
「そうだよ。だから、同じところに絶対行けるように お互い頑張ろうな」
「うん!!」

そして 俺達は笑いあった。
夕陽が差し込む、二人しかいないオレンジ色の教室で、そっと最後に‥‥‥キスをした。

********

「ねぇ 知ってる?!駅前の方においしいパフェの店があるんだって!!」

教室を出てから少し歩いた後、三歩ほど前を歩いていた留美が突然振り返ってそんなことを言った。

「―――‥‥だから‥?‥」

大体 留美の言いたいことは分かってる。
どうせ、今から食べに行こう!とか言い出すんだろう。

「‥‥今から‥食べに行かない?」

ちょっと上目遣いで、話し掛けてくる。
そこで 思わず「あぁ、いいよ」と言ってしまいそうになるのをグッと堪えて、俺は返事をする。

「俺、甘いの苦手だって言ってるだろ?」
「え〜?いいじゃん、行こうよ!ね?ね?お願い!!」
「‥‥‥‥‥」

やっぱり俺は、留美の頼みを断ることが出来ないようになってしまっているんだ。
最終的にはいつも、留美の頼みを聞いてしまう。

――――惚れた弱みって奴か‥‥?

「ハァ〜。いいよ。今から行こう」
「やった!ありがと 和樹!!」


それから 俺達は、パフェを食べに駅前に向かった。

「おい。‥‥‥今日、行くのか?」
「行くよ?ここまで来て何言ってんの?」
「だって お前‥‥これ‥‥」

目の前に広がるのは長蛇の列。
店の中に入るのに どんだけ時間かかるんだよ。

「いいじゃん!並んでたらすぐだって!!」

「―――‥‥絶対ウソだ‥‥」

「何か言った?」
「イヤ別に‥‥」

どうも留美には逆らえない。

********

あれから結局1時間並んで、留美はチョコパフェを頼んで満足したようだった。
俺はというと‥‥‥、コーヒーを飲んだだけだった。

「おいしかったぁ〜。また行こうね!和樹!!」
「‥‥‥‥‥」

満面の笑みで留美はそう言ったが、俺には返事をする気力さえ残っていなかった。

「そうだ!!ねぇねぇ、今日さぁ カメラあるんだけど‥‥写真撮らない?」

俺達がいつも通る 海の見える公園で、留美は言った。

「もうすぐ7時だぞ?」
「まだ明るいよ」

‥‥‥確かに今は六月で、7時前といってもそんなにたいした暗さじゃない。
でも 俺、写真だけはどうしてもダメなんだよなぁ〜。

「悪い。俺ホントにカメラとか苦手なんだよ」
「どうしてもダメ〜?」
「うん。これだけは本当に無理」
「う〜。じゃぁ、プリクラは?」
「それも 無理‥‥」
「‥‥‥‥‥」
「ゴメンって、な?‥‥今度、パフェおごってやるから」
「うん!!それで 許す!!」
「現金だなぁ〜」
「何とでも言って。じゃぁ また 月曜日にね!!」
「おう」

笑顔で大きく手を振って帰っていく留美を見送ってから、俺もやっと家に帰り始めた。


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