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ただ君の幸せを‥‥。

16.捨てられない物<前編>



ついにやって来た、文化祭当日。
私のクラスの屋台は、たい焼きをすることになった。
文化委員なんてものになってしまったから、基本的にはあまりクラスのところにいられなかった。

「あっ、宮永!!生徒会の人が、探してたぞ」
「え、ホントに?何だろう?」

友達と一緒に話していたところに、背後から声をかけられ振り返ると、そこには立石君がいた。
以前から、留美絡みで 顔見知り程度に話はしていたが、文化委員で一緒になったことをきっかけに 結構仲が良くなった。

「さぁ?とりあえず早く行ってやれよ」
「そうだね、じゃあ行ってくるよ。‥‥そうだ、ここまで来たからには 立石君も我がクラスの売上に貢献してよね」

ふと思いついて、わざとらしい笑顔を見せて 立石君に たい焼きを買ってもらうように促した。
途端に、立石君は 困惑したように苦笑いを見せた。

「何よ?私のクラスの出し物を食べられないっていうの?」
「いや、そういうわけじゃないけど‥‥」
「じゃあ何よ?」
「―――分かったよ。買えばいいんだろ買えば」

渋々といったように、立石君は買うことを承知した。
それを見て、気の済んだ私は 急いで生徒会の人のもとに向かったのだ。


だから、私が立ち去ったあとで 立石君が、食べられないたい焼きを持って どうしようかと悩んでいるなんて知る由もなかった。


********


「あれ?宮永こんなところで何してるんだ?」
「あっ、斎藤くん。ねぇ、生徒会の人どっかで見かけなかった?」
「生徒会?体育館のほうでちょっと前に見かけたけど?」
「そっか。ありがとう!!‥‥そうだ!!斎藤君も私のクラスのたい焼き買ってよね!!」
「‥‥‥‥」

嫌そうな顔をして黙りこくる目の前の斎藤君。

「何よ、私のクラスの出し物は食べられないっていうの?少しは立石君を見習いなさいよ」
「和樹を‥‥?」
「そうよ!!ちゃんと、立石君はたい焼き買ってくれたわよ」

それを聞いて途端にビックリしたような顔になる斎藤君。
何をそんなにビックリすることがあるというのだ。

「何よ?」
「ホントにあいつ、買ったのか?たい焼きを?」
「そうよ、買ってくれたわよ?何か文句でもあるの?」
「‥‥‥たい焼きって、あんが入ってるよな?」
「入ってるに決まってるじゃない」

本気で、呆れたような顔になる立石君。
私には何が何だかさっぱり分からない。

「何なのよ、一体!!」

斎藤君の次に発した一言で、私は半ば唖然となる。


「あいつ、甘いもん食べられないんだよ」


********


無理やり買わした様なもののたい焼き。人が良すぎるのにも程がある。
食べられないたい焼きを立石君は一体どうしたんだろうか?

「もう、どこにいるのよ!!」

一言謝りたくて、生徒会の人に用事を聞いたあと 必死に私は探していた。
けれども、立石君も文化委員。
決して暇なわけではなくて、なかなか会うことが出来ずに もう陽も落ちて 文化祭の終わりを告げる放送がかかっていた。

「そうだ。もしかして‥‥」

心当たりがあるのを思い出して、私は急いで運動場に向かった。


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