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ただ君の幸せを‥‥。

2.突然の知らせ



「和樹!!あんたいつまで寝てんの!?暇なんだったら たまには 家のこと手伝いなさい!!」

休みの日を自由に使って 平日の五日間で少しずつ擦り減っていく気力を回復するのは、 学生の特権みたいなもんだろ?

「和樹ー!!まだ寝てんの!?」

「今 起きたよ‥‥」

休みぐらいゆっくりさせろよな‥‥。そうは思っていても、口に出すことはない。
母さんに正面向かってそんなこと言ったら‥‥‥考えただけでも恐ろしい。

「朝ご飯食べるの〜?いらないの〜?どっち〜?」
「食べるよ!!」

‥‥‥とりあえず飯でも食って、このあとの予定はそれから考えよう。

そうして 俺は、朝食をとるために、自室のある二階から一階へ降りてきた。


「あんたねぇ、もうすぐ受験生になるんだから もうちょっとやる気ってものを出してみたらどうなの?」
「‥‥‥‥」
「やってる子はねぇ、朝早くから起きて勉強してるのよ?」
「―――‥‥心配しなくてもちゃんとやってるって」

「もう!!あんたの その のんびりした態度で私はいつも不安になるのよ!!」

‥‥‥一回言い出すと長いんだよなぁ〜。
飯も食ったし、誰か適当につかまえて出かけるか。

「ごちそうさまでした」

「‥‥‥‥」

さっさと食器を片付けて、俺はとっと自分の部屋に引っ込んで携帯をいじりだした。

「‥‥‥‥」

つながらねぇ〜。何だよ、みんな忙しいのか?
‥‥仕方ねぇな、今日はデートの予定はなかったけど、留美でも誘うか。

「‥‥‥‥」


『はい』
「留美?俺だけど、今暇か?」
『ん〜?和樹?暇だけど、それがどうかした?もしかして デートのお誘い?』
「まぁ、そんなもん」
『いいよ、遊べるよ。今すぐ?』
「うん、出来れば。今すぐ出れる?」
『えっと‥‥15分くらい待ってくれたら』
「ん。分かった。じゃあ、30分後にいつもの公園な」
『は〜い。じゃあ あとでね』
「おぉ!」

よし、これで今日の予定は決まったな。
‥‥‥ちょっと早いけど、ついでに今日渡しとくか‥‥‥、留美の誕生日プレゼント。

********

待ち合わせ時間から、5分が経過。

「ゴメン!!ちょっと遅れちゃった!!」

慌てて走ってきた留美と余裕で時間通りに来た俺。
まぁ、留美が少し遅れてくることぐらい予想出来ていたから、 怒る気にはならなかった。

「いいよ いいよ。俺が突然誘ったんだから」

「うん!そうだね!!」

「―――‥‥お前なぁ〜」

「で、和樹今からどこ行くの?」
「ん〜。とりあえず 映画でも行くか」
「映画!?じゃあ 私観たいのがある!!」
「そうなの?じゃぁ、それ観に行くか」
「うん!!」


それから俺達は駅まで出て、 留美の好きそうな恋愛映画をきっちり2時間観た。


「よかったね〜」
「‥‥‥そうか?」
「もう!!分かってないな、和樹は!!」
「すいませんね〜。恋愛映画に感情移入できない男で」


そのあとテキトーな店に入って 昼食をとり、 留美の買い物に付き合った。
ああだ こうだ やってる内に、 あっというまに日が暮れ始めた。


「そろそろ 帰るかぁ〜」
「そだね」

他愛のない会話を繰り返しながら、 いつもの海の見える公園まで やっと来た。
そこで 俺は留美と並んでベンチに座った。


「留美‥‥。ちょっと右手だして」
「え‥‥?‥‥何?」
「ちょっと早いけど‥‥、誕生日プレゼント」

留美の右手の薬指に、俺は指輪をはめた。

「‥‥‥ウソ。嬉しい‥‥。 でも、普通って左にしてくれるんじゃないの?」

ベンチに座る留美を残して、 俺は一人立ち上がり 2・3歩前に歩み出た。
そして、留美に背を向けたまま、立ち止まる。

「どうしたの?」

「留美!!今から言うこと‥‥笑わないで聞いて欲しい」

「えっ?‥‥う、うん」

大きく二回深呼吸する。

「これから、あと1年間高校生活を送って、 俺達は二人で美術大学に必ず合格する」
「うん」
「‥‥四年間大学に通って、無事卒業できたら‥‥その時は、 留美の左手の薬指に指輪をはめたいと思う」
「えっ?‥‥それって‥‥」
「俺はまだまだガキで、頼りなくて、 周りから見れば ガキの夢だと思うかもしれない。 でも 俺は、ガキはガキなりに本気だよ」

そこで いったん 言葉を切り、留美の方に向き直る。

「羽田 留美さん。大学卒業したら、俺と結婚してくれませんか?」

目の前のベンチに座る留美は、 両手を口元に当てて、目からは 涙が溢れていた。
そんな留美に俺は微笑みかけた。

「なぁ、返事は‥‥?」

留美はただ、ひたすら首を縦に振った。

********

家に帰ってからの俺は、妙に機嫌が良くて、 今なら何だって出来るような気がした。

ルルルルルー ルルルルルー ルルルルルー

突然 鳴り響いた電話。それを機嫌よくとった俺。

「はい、立石ですけど どちら―――」


時間が止まり、

目の前には大きな闇が広がった気がした。


「‥‥何‥‥だって‥?‥‥留美が‥‥」


「―――‥‥交通事故‥‥?」

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