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「なぁ、そろそろ泣き止めば?」
「‥‥止まらないんだもん」
「何か、俺が泣かしてるみたいで嫌なんだけど」
「だって そうでしょ?」
「はぁ!?俺がいつ一体何したよ!?」
「‥‥私のこと好きだって言った」

尾沢は目を丸くして私を見つめ、その直後パッと目をそらして顔を赤くした。

「今頃照れてるの?」
「知るかっ」

死にたくない。5%の希望にかけたい。そう、強く願う。
だって、彼は私を好きだと言ってくれた。私が死ぬかもしれないと分かっていて、それでも好きだと。そう 、言ってくれた。

「‥‥私、今まで一度だって死を怖いと感じたこと無かったよ」
「‥‥‥?」
「けど、尾沢君と期間限定の付き合いを始めて 尾沢君のことを近くで見てきて、もっともっと好きだと思っ た。日に日に強くなる好きという思いに、怖ささえ覚えた。この時間が永遠に続けばいい、別れなんて訪れ なければいい。そう思った」
「‥‥‥‥」
「でも、終わりは必ずやってくるから。‥‥そのことを改めて思い知らされたとき、初めて感じたんだ」
「‥‥何を?」


「‥‥死ぬことの怖さ」


死にたくないとそう感じる。でも、成功率5%という数字は、希望を持つにはあまりにも絶望的すぎる数字 で、私は一番大切な生きるという意志を忘れかけていた。今日、尾沢が私に会いにやってくるまでは。

「さっき尾沢君が来るまでは、自分でもう死ぬことを決め付けてた。‥‥生きる意志がなかったら、成功す るものも成功しなくなっちゃうよね」
「‥‥そうだな」
「‥っ‥でも、‥怖いんだ。‥眠ったら、そのままもう目を覚ますことが無い気がしてしょうがない。尾沢 君に、もう会えない気がしてしょうがない」
「お前が弱気になってどうするんだよ。‥‥それに、お前だけが怖いんじゃない。仲尾の親だって、もの凄 く怖いに決まってる。もちろん、‥‥俺だって」
「死にたくない。‥‥そう今なら思えるよ。尾沢君には、感謝してる。幼かったときも今も、尾沢君の言葉 にずっと救われてきた」

何言ってんだ。って顔をして、尾沢は少し微笑んだ。

「‥‥小さい時はずっと病院生活で、外で遊んだことなんてなかった。学校に行くなんてとんでもないこと で、ずっとずっと一人で‥‥友達も作れずにいた」
「‥‥‥‥」
「でも、ある日私は看護士さんの目を盗んで病室を抜け出したんだ。どこか行きたいところがあるわけじゃ なかったんだけど、とにかく病室から外に出たかった。普通に、外で遊んでみたかった。それで、ひたすら 歩いて 公園に辿り着いた。そこには、同い年ぐらいの男の子達が遊んでたんだけど どうやって声をかけて いいのか分からなくて、ずっと公園の入り口に突っ立ってた」
「そんなの普通に声かければ良かったんじゃねぇの?」
「それが出来れば苦労しないわよ!!‥‥でね、ずっとそこにいたら突然ボールが飛んできたのよ」
「‥‥‥?」
「突然すぎて私避け切れなくて、勢いよく当たっちゃってさ。痛かったなぁ」

何か考え込むような表情をして、少し顔を俯けた。

「‥‥なぁ、もしかしてそれって」
「やっと気付いた?」

何とも言えない表情をした尾沢を見て、思わず笑みが浮かんだ。すると、少しムッとした顔をして尾沢は言 葉を続ける。

「なら、あの時言えば良かっただろ!?一人語ってて馬鹿みたいじゃねぇか!!」
「私だって、気づかない尾沢君が悪いんでしょ?私は入学式の日に、尾沢君を見かけて あの時の子だってす ぐに気が付いたし」
「‥‥‥うっ」

あの日 あなたに再会した喜びを 言葉にするのは不可能だった。


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