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「私ね、尾沢君とあの日会うまで‥‥ああやって遊んだりすることって無かったんだ」
「マジで?」
「うん。学校には行ってなかったし、同じ歳くらいの子たちは、多分私とは遊びにくかったんだと思う」
「‥‥何で?」
「‥‥心臓が、悪かったからかな?きっと親とか先生が言ってたんだと思う。あの子は心臓が悪いから、 激しい遊びはしちゃだめよって」


―――『ねぇ、一緒に私も遊んでいい?』

―――『う〜ん、でも〜有紗ちゃん走っちゃいけないんでしょ?』


「別にね、多少の運動はしても良かったんだよ?それに、苦しくなったら大人しくしとくし。他の子たちの 邪魔をするつもりは無かったんだよ?」

けど、それでも皆は私が声をかけると少しだけ嫌な顔をする。
周りの子たちと顔を見合わせて、どうする?って相談するんだ。でも、相談しているといっても、答えはい つも決まっていた。


―――『ゴメンネ』


そうして、立ち尽くす私を置いて 皆外に向かっていくんだ。
待って、待って。お願いだから、私も仲間に入れて‥‥?

「だけど、皆 私と遊ぼうとはしてくれなかった。‥‥だからね、私あの日凄く凄く嬉しかった」
「俺らと一緒に遊んだ日?」
「そう!!仲間に入れてもらえたこと、凄く嬉しくて このことはずっと忘れないって思った」

初めて尾沢と出会ったあの日以来、私はあの公園に行くことは出来なかった。私の退院と合わせて、お父さ んの転勤が決まったから。少しだけ尾沢と会えることを期待していた私は、少しだけ悲しかった。でも、中 学3年生になる少し前に こっちに戻ってくることが決まった。
尾沢のことは、1日だって忘れたこと無かったけれど、もう会うことはないだろうと思ってた。

「想像できるかな?私が入学式の日に、尾沢君を見つけたときの喜びを」
「そんな大袈裟なもんかよ?」
「大袈裟なものだよ。少なくとも私にとってはね」

入学式のその日、私は我が目を疑った。こんな偶然あるわけない。こんな夢みたいなこと起こるわけがない 。でも、確かに私の目に映った人は あの日公園で遊び相手になってくれた男の子だった。

「それから、今まで ずっと尾沢君のことを見てきたよ。それで、自分の気持ちはただの憧れとか、一時的な 気の迷いなんかじゃないって確認することが出来た」
「‥‥‥‥」
「ゴメンネ。脅すようなマネして。言い訳になるかもしれないけど、尾沢君との思い出を作るのに必死だっ たんだ」
「‥‥‥‥」

尾沢は妙に真剣な表情をしたまま、口を一向に開こうとしない。
少しだけ、不安になる。何か私は、尾沢を不愉快にさせるようなことを言っただろうか?

「‥‥お、尾沢‥君?」


「思い出なんて言うなよ。あんなの、思い出のうちになんか入らねぇよ」


「え?」
「あんな、気持ちが通じ合ってない状態で付き合ってた期間なんかを俺との思い出にするなよ。俺たちはこ れからも続いていくんだ。終わりじゃない。こんなところで、今までの日を過去の思い出になんかに摩り替 えるな」

これからも続いていく。
その言葉を貰えたことが、どんなに嬉しかったか。きっとあなたには分からないね。


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