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「好きです。付き合ってもらえませんか?」
「はっ?」

唐突すぎた告白に、尾沢の顔には疑問符が飛び回っていた。

「何て言った?」
「だから、付き合ってもらえませんか?って」

場所は、部活を始める前のグラウンド。尾沢以外には、まだ来ている人は居なかった。 尾沢が誰よりも早くグラウンドに姿を現すことは、この一年でばっちり把握していた。 だから、HRが終わったあと 申し訳ないが掃除をサボってここまで急いでやって来た。

「えっと、悪いんだけどさ‥」
「ゴメンナサイ?」
「えっ、あ‥‥うん。付き合うことは出来ない」
「どうして?」
「どうしてって言われても‥‥。俺、お前のことよく知らないし。それに、今は部活に集中したいんだ」
「‥‥そっか」

申し訳なさそうにしながらも、脇にはしっかりとサッカーボールを挟んでいた。
こんな時ぐらいサッカーボール置いておけばいいのにと少し思ったけれど、これが尾沢なんだよねと思う と全然腹は立たなかった。

「じゃ、俺部活あるから」
「‥‥あっ」

やっぱり振られたか。そりゃそうだよね。
でも、こんなことで引き下がる私だと思ったら大間違いよ。最低だと言われても、ここは絶対に引けない んだから。ううん、こんなことで引いちゃいけない。私には、今しかチャンスはないんだから。

「あっ!!有紗っ!!‥‥どうだった?」
「‥‥ダメだった」

教室へ戻る途中、心配していた綾香が私のもとに走り寄ってきた。

「どうするの?このまま引き下がるの?」
「まさか。とりあえず、部活が終わるの待って、それからまた交渉しに行ってくる」
「‥‥そっか。でも、そのやり方で本当に後悔しない?」
「う〜ん。どうだろ?するかもしれない。でも、今の私に 手段を選んでる余裕はない」
「‥‥そうだね」

そう、私には 限られた時間しかない。その時間の中で、私は尾沢との思い出を作りたかった。

「尾沢君!!」
「‥‥え?って、お前」

部活が終わって制服に着替え終わった尾沢を、私は校門前で待っていた。 そんな私を見て、露骨に嫌そうな顔をする尾沢。けれど、そんなことで怯む私じゃない。

「あのさ、しつこいのを承知で頼みがあるんだけど」
「何度言われても、俺はお前と付き合う気はない」

目の前を素通りしようとする尾沢。その尾沢の腕を咄嗟に掴んで、引き止める。 帰すわけにはいかなかった。私の話を最後まで聞いて、提案を飲んでもらうまでは。

「何だよ。俺、疲れてるから早く帰りたいんだけど」
「それでも、話だけでも聞いてくれない?」
「‥‥言いたいことあるなら、さっさと言えば?悪いけど、何言われてもお前と付き合う気はない」


「‥‥期間限定で、私と付き合って欲しいの」


一瞬、何を言われているのか分からないような表情を浮かべたあと、目を見開いて素っ頓狂な声を 上げた。

「はぁ!?」

さぁ、ここまできたなら後には引けない。


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