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「お前、何言ってんの?」
「だから、期間限定で私と付き合わない?って言ってるの」
「ふざけんなよっ。期間限定って何だよ!?」

怒りを露にして声を張り上げる尾沢。
確かに私は、ふざけた提案を尾沢に持ちかけた。けれど、こうするしか今の尾沢に付け入る隙はなかった んだ。

「ふざけてなんかない。私は、本気で言ってるの」
「はぁ?お前、俺のこと好きだって言っときながら期間限定で付き合えとかいうのかよ。 俺のことなめてるとしか思えないね。こうなると、さっきの告白は冗談だったのか?」
「冗談なんかじゃないわよ!!」
「なら、何で期間限定の付き合いでいいなんか言うんだよ。どうせアレだろ?俺と付き合ってるっていう 肩書きが欲しかっただけだろ?何か勘違いしてんじゃねぇの?男は女のブランド品じゃねぇんだよ」

サッカー部を立ち直らせた尾沢は、学校中の人気者だった。そんな尾沢はもちろん女の子にモテていた。 ただ純粋に尾沢という人物が好きな人もいたけれど、サッカー部の尾沢というのが気に入って告白する 人も沢山いた。不本意だが、期間限定の付き合いでいいという発言をしたために 尾沢の彼女だという肩書き が欲しいだけの女と思われたようだった。

「尾沢君の彼女だっていう肩書きが欲しいわけじゃない。期間限定でいいと言ったのは、私を知ってもらう ための期間を言ったの」
「はっ?」
「尾沢君言ったよね。私のこと知らないしって」
「‥‥ああ」
「なら、14日まででいい。とりあえずその日まで 私と付き合ってみてよ」
「‥‥その間に、お前のことを知って14日に答えを出せって?」
「そう」

きちんと私と向かい合う形になった尾沢は、私の顔をチラリと眺めて悩むように顎に手を当てて視線を足元 に落とした。

「いや、やっぱり悪いけど。それでも俺は、お前とは付き合えない。お前のことを知るチャンスを与えられ ても、俺はお前のことを好きにはならない」

半分くらい予想していた通りの返事が返ってきた。だから、特別驚くこともなく 次のセリフが口から飛び 出した。

「佐中さんが、‥‥好きだから?」
「なっ!!」

一瞬で顔を真っ赤にさせた尾沢。そんな尾沢を見て、少し胸が痛んだ。

「この間、生徒手帳落としてたよね?あれ、届けたの私」
「!?」

生徒手帳の中には、明らかに隠し撮りだと思われる佐中さんの写真が入っていた。生徒手帳を拾ったとき その写真が目に入り、あぁ、尾沢はこの子が好きなんだと確信した。

「‥‥脅してんのか?」
「別に。ただ、自分の隠し撮り写真が誰かの手元にあるなんて、あまり気持ちのいいことじゃないよね」
「‥‥それを脅してるっていうんだよ」
「そう?ならそうとってもらっても構わない」
「‥‥まさかお前が、そんな卑怯なマネするとは思ってなかったよ」
「人のことよく知りもしないで、そんなこと言わないで欲しいわね」
「そうかよ。最低だな、お前。‥‥いいぜ、その案 のってやるよ」

腕組をして、上から下を見下ろす格好で冷たく彼は言い放った。

「けど俺は宣言するぜ?お前みたいな最低な奴、何年付き合っても好きになんかならねぇよ」
「‥‥‥‥」

最低なマネをしたのは私。そんなことは分かってる。けれど、痛む心を押さえることはいくら頑張っても 出来なかった。


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