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「尾沢君!!一緒に帰ろ」
「‥‥‥‥」

HRが終わって、さっさと掃除も終わらせて急いでやってきた尾沢君の教室。 顔を出した瞬間に、尾沢君と目が合い。瞬間、嫌な顔をされた。少し、いや かなり傷付いたけれど そうされても仕方ないことをしたのだから、私は何も言わなかった。

「あれ?仲尾さんって、秋広とどういう関係?‥‥もしかして、付き合ってるとか?」

ギョッとした顔をして、尾沢の近くに立つ友人の顔を見たのを私は見逃さなかった。

「ううん。違うよ。‥‥私は、尾沢のこと好きだけど、見事にフラれちゃったし。 だから、勘違いしないでね。まぁ、私はまだ懲りずに追い掛け回してるけど。ね?」
「‥‥‥‥」
「秋広?ってか、お前もったいないことしたなぁ。何で、振ったんだよ」
「じゃ、俺帰るわ」
「あっ!!ちょっと待ってよ!!」

あくまでも私のことを無視しようとする尾沢を慌てて追いかける。コンパスの違いのためか、尾沢は歩いて るだけなのに すでに私は小走りだった。

「ちょっと!!待ってって言ってるじゃないっ、うわっ」

校門を出て、しばらくしたところで突然立ち止まる尾沢。突然すぎて、私は勢いのまま尾沢の背中に突っ込 んだ。

「止まるなら止まるって声かけてよ!!」
「‥‥待てって言ったから止まっただけだろ」
「うっ、‥‥ありがとう」

何を考えてか、一緒に並んで歩いてくれる気になったらしい。けれど、無言という圧力が重く私に圧し掛か る。何か話題に出来るものはないかと、必死に話のネタを考えていると 意外にも会話を振ってきたのは尾沢 のほうだった。

「‥‥何で、お前さっき俺と付き合ってないって答えたんだ?」
「はっ?」
「だから、一応今って俺と仲尾は付き合ってるんだろ。何でさっき違うって答えたんだよ」
「何でって、これは本当に付き合ってるわけじゃないでしょ?それとも本当に付き合う気になってくれた? そうなれば手間が省けてかなり嬉しいんだけどね」
「んなわけねぇだろ。‥‥意外だっただけだよ」
「何が?」
「‥‥あそこで、俺と付き合ってるって言っとけば 多分あいつは信じたよ。俺がいくら否定しようとも。そ うなれば、もちろん佐中の耳にもこの話は入るだろうし、お前にとっては都合が良かったんじゃねぇの?」
「でも、そうされると尾沢君はもの凄く困ったでしょ?」

チラッと尾沢の顔を見上げると、尾沢も私のことを見下ろしていた。そして、眉根を寄せて少し迷ったよう な困ったような顔をしていた。

「どうかした?」
「‥‥お前って、どっからが計算?昨日のが地?それとも今日のお前が本当の仲尾?」
「さぁ?」
「さぁって何だよ」
「どっちが本当だと思う?」

少しだけ意地悪く微笑んで見せた。すると尾沢は少しだけ面食らったような顔をしていた。

昨日はひたすら知り合うこと、近づく口実を作ることを目標と置いていた。そりゃ、私にとって佐中さんと いう存在は非常に邪魔なものかもしれない。でも、尾沢は私の好きな人だよ?それもかなり年季の入った。 好きな人を困らせるようなこと、私はしようと思わない。‥‥昨日はすごい酷い態度をとってしまったけれ ど。

「‥‥わっかんねぇ奴」

そう言って少し微笑んでいた彼を私はきっと忘れない。


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