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「ただいまぁ〜」
「お帰り。‥‥少し、話があるから着替えたらリビングに下りてきなさい」
「え?‥‥うん」

家に入ると、リビングから顔を出したお母さんが重苦しいオーラを放ちながらそう私に声をかけた。
いつもとは違う空気を感じ、笑って聞くような楽しい内容の話でないことはすぐに分かった。

「‥‥話って?」

着替え終わって下に下りてくると、お母さんはイスに座ってこちらをじっと見つめていた。 そして、少し考えたような表情をしたあとに口を開いた。

「‥‥倒れたそうね。‥私、そんな話聞いてないけど?」
「そうだったっけ?」
「ふざけてないで真面目に聞きなさい!!今日保健の先生に、連絡を貰ったのよ。有紗がこのあいだ倒れた って」
「そう。‥‥でも、たいしたことないよ」

言った後に後悔する。お母さんは、泣くのを堪えることもせずただ私を見ていた。

「馬鹿なことばかり言わないで。‥‥もう、いいでしょ。限界なのよ。まだ、可能性のあるうちに 病院へ行 きましょう?」
「でも、お母さん!!」
「お願い。有紗」

もう、我侭を通すわけにはいかなかった。


「何だよ話って」

お母さんとの話のあと、私は初めて尾沢に電話をかけて、公園に呼び出した。。何故電話をかけたのか。それは、今日中にけじめ をつけなくてはならなくなったから。

「明日、だよね。‥‥約束の期限は」
「‥‥そうだな」
「‥1日、‥‥早くなったけど」

言いかける私を遮って、尾沢はニッと笑って口を開く。

「何だよ、返事は今日じゃないぜ?」


「別れて欲しいの。‥‥返事はいらない」


「‥はっ?え、お前何言ってんの?」
「だから、別れて欲しいって。ごめんね、散々付き合せといて」

口をわなわなさせながら、尾沢は驚愕の眼差しでこっちを見ていた。何を言われたのか分からない。どうし て私がこんなことを言ったのかが分からない。そう、目が私に訴えかけていた。

「嘘だろ?ふざけたことばっかり言ってんじゃねぇよ!!お前俺をなめてんのか!?」
「ゴメン」
「っ!!馬鹿にするのもいい加減にしろよ!!お前に付き合わされたこっちの身にもなってみろよ!?」
「ゴメン。もう、忘れてくれていいよ。‥‥佐中さんのこと、頑張って」
「なっ!!俺はお前のことっ‥‥くそっ!!もういい。二度と俺の前に姿を見せるな!!」
「‥‥ゴメン」

尾沢に背を向けて走り出す。ゴメンゴメンゴメン。
どれだけ謝れば、あなたに許してもらえるかな?‥‥きっと、許してなんかもらえないだろうね。最低な第 一印象と最低な別れ方。けど、これだけ酷い印象を与えたなら 少しぐらい尾沢の記憶に残ることが出来るか な?
携帯を取り出して、電話をかける。最後の最後の悪あがき。これくらい、許してもらえるよね?

「‥‥綾香?頼みたいことが、あるんだ」

頬を伝う涙を堪えようとは思わなかった。


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