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〜 イチゴとミカン 〜
『ただ君の幸せを‥‥。』より 和樹と達也
「お前さぁ、甘いもんダメだっつうけど イチゴはどうなんだ?」
「え?イチゴ?それは大丈夫だけど?」
「イチゴは甘くないのかよ」
突然何を言い出すのかと和樹は思う。
「いや、甘いやつもあるけど 大抵すっぱくないか?」
「じゃあ、ミカンは?」
「‥‥‥‥‥」
「おい?」
突然黙り込む和樹を不審に思い、達也が顔をそっと覗き込む。
「どうしたんだよ」
「いや、ちょっとこの間のこと思い出して」
「この間?」
そう言って、悲痛な面持ちで和樹はポツリポツリと話し出す。
「実は、この間母さんの実家からダンボール一杯にミカンが送られてきたんだよ」
「うん。で?」
「まぁ、一箱ぐらいいいじゃないか。でもな、その二日後に近所のおばさんがおすそわけにってミカンを持ってきたんだ」
「‥‥‥‥‥」
「父さんは父さんで、会社で貰ったんだと言ってミカンの缶詰めを持って帰ってくるし‥‥」
「もっ、もういいぞ。和樹。分かった。俺が、悪かった」
「‥‥そうか」
ミカン地獄に悩まされている和樹の家には、まだミカンが大量にあるらしい。
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