●● 不器用な私達 --- 4 ●●
「ハル!!よくやった!!」
「お前さえいれば、全国も夢じゃない!!」
いくつもの試合を重ね、勝利の数を順調に増やしていった男子バスケ部。
もちろんハルの力あっての勝利だ。
でも、みんな気付かない。
チームの優勝に舞い上がって、ハルの調子が今ひとつなことにみんな気付かない。
「―――‥ハル!!」
先輩に揉みくちゃにされているハルに精一杯の大声で呼びかけて、ハルの所まで駆け寄って行き コートの外にハルを連れ出した。
「‥‥っ‥何だよっ」
試合の後に物凄い勢いで私に引っ張りまわされたハルは、少し息を切らしながらしゃがみ込み 私を見上げた。
「‥‥無理‥しないほうがいいよ」
「ハァ?‥‥無理なんかしてねぇーよ」
「してるじゃない!?みんなは気付いてないかも知れないけど、私の目は誤魔化せないよ!」
「‥‥‥‥‥」
「ねぇ、いつまでもこのままじゃダメだよ。ハル一人じゃ‥‥無理だよ」
「‥‥‥お前、先輩達が頑張ってないとでも言いたいのか」
声を低くして明らかに怒っているハルに一瞬怯んだけど、負けじと私も言い返す。
「そんなこと言ってない!ただ、先輩達はハルを頼りにしすぎてるよ!!」
「‥‥‥それ以上言ったら‥怒‥る‥‥ぞ」
「―――‥ハル!!」
目の前で、地面に倒れこんでいくハルを私はとっさに抱きとめた。
「おい?お前ら何ケンカして‥‥‥‥。ハル!?」
私達の言い合いが聞こえてきたのか、ハルの先輩がこっちにやってきた。しかし、ハルの姿を目にとめると血相を変えて駆け寄ってきた。
「ハル!?ちょっ、ハルどうしたんだ?」
「たぶん、疲労か何かだと‥‥」
「―――‥疲労?‥‥‥って、何泣いて」
「‥‥先輩方が、ハルを頼りすぎるからっ!先輩はっ、本当にハルが天才だとでも思ってたんですか?!」
突然泣き出した私に、先輩は驚きながらも「話はあとで詳しく聞かせてくれないか?とりあえず今は、ハルを保健室に連れて行こう」と言って、ハルを担ぎ上げた。
「‥‥‥っ‥‥」
「ハル!!気がついたのか!!」
保健室に運び込んでから、1時間ぐらい経った頃 やっとハルは目を覚ました。
「ハル。悪かったな。俺達のせいで‥‥」
起きた途端 突然先輩に頭を下げられて、ハルは何がなんだか分からないというような顔をした。
「聞いたんだ。俺達のせいだよな。‥‥お前が無理してることに気付きもせず、ずっと頼りっぱなしにしてさ」
ハルはキッと私を睨みつけてきた。余計なこと言いやがってと言いたいんだろう。
「ハル、愛里ちゃんはお前のためを思って俺達に話してくれたんだ。確かにさ、俺達も悪かったかもしれない」
先輩は少し悲しそうに笑ってハルの頭を小突いた。
「でもさ、俺達チームメイトだろ?もうちょっと信用してくれよ」
「してますよっ!!」
「‥‥でも、一人でずっと自主トレしてた」
「‥‥それは」
「お前の努力に誰も気付かなかった。それで天才なんて呼ばれて、しんどかったんじゃないか?」
「そんなこと‥‥」
ハルの周りにいた先輩達はみんな顔を見合わせて、声を合わせてたった一言ハルに告げた。
「お前はしばらく自主トレするな!!」
その言葉にハルは2・3度瞬きを繰り返した。
「‥‥何で‥‥」
「お前が頑張ってきた分、俺達も頑張らないといけないだろ?」
**********
「余計なことしやがって‥‥」
先輩達がみんな帰ったあと、ハルは私を見ずに言った。
「だってさ、バスケは一人でやるもんじゃないでしょ?」
「―――‥まぁな。‥‥俺が、間違ってたかな。ありがとう」
そう言ったハルの顔は、これからのことを考えているのかすごく生き生きしてた。
「―――‥やっぱり、好きだなぁ」
「何か言ったか?」
「ううん。何も。‥‥じゃぁ、お大事にね」
「あぁ」
今はまだ、伝えない。
私の気持ちを伝えてギクシャクするのも嫌だし、なにより ハルの大好きなバスケの邪魔をしたくないから。
だって私は、バスケばかのハルが誰よりも好きだから。
***あとがき***
2000HITのキリリク作品です。
テーマは、同じ部活同士の恋愛小説ということでした。
果たしてちゃんと私は書けているのでしょうか‥‥?
そして題名の意味が‥‥あまりなかったような。‥‥あえてつっこまないであげて下さい(泣)
緋月さん、ちゃんと書けているのか疑問大爆発的な小説ですがこれでお許しくださいませ。
まだまだ未熟者の私を、温かい目で見守ってあげてください。
2004.7.3 管理人:風花
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