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● キミのトナリ --- 4 ●

彼はやっぱり、あの日の彼だった。


「アレ?先生 いないや‥‥」

保健室まで一言も言葉を交わさないまま 私たちは歩いてきた。やっとこの気まずい雰囲気も終わりかと思ったら‥‥、先生がいなかった。

「―――‥‥先生、呼んでこようか‥‥」

神楽を残して 職員室に向かおうとした私を、神楽が腕を掴んで止めた。

「―――‥‥え‥‥?」
「いい。‥‥自分で出来るから‥‥」

――――私は‥‥戻ったほうがいい‥‥のかな?

「戻らなくていいから‥‥、手伝って」
「あっ、うん。わかった」

そんなに、顔に出やすいのだろうか?


「―――‥‥野波って、そんなに俺のこと嫌い?」
「はっ?」

一体何を言いだすんだこの人は‥‥?その言葉は、そっくりそのままあなたに返そう。

「だって、あの日以来 俺と話してくれないし」
「いや だってそれは、話したかったけど いつも誰か女の子いて、とてもじゃないけど 間に入れそうな雰囲気じゃなかったし、神楽 愛想良すぎるし」

「―――‥‥神楽 人気あるから、私なんか忘れちゃったかな?とか あの日のことは夢だったかな?とか 考えたり。私とは話さないのに、木ノ内さんとかとはずっと話してるし――」

自分で何が言いたいのか分からなくなってきた。

「―――‥‥もしかして、妬いてたりする?」
「えっ?えっ?えっ?」

そうなの?!もしかして 今までのもやもやってそうなの?!
きっと私の今の顔は、ゆでだこみたいに真っ赤なんだろう。

「―――‥‥そっか。なんだ」

神楽は私の妙なうろたえ方を見て、ホッとしたような顔をして微笑んだ。

「―――‥‥何で笑うのよ」
「え?だって、野波って 俺のこと好きってことでしょ?違うの?」
「‥‥‥違わない‥‥と 思うけど‥‥」
「ね?俺達 両思いじゃん」


「‥‥は?‥‥」


「俺も 野波のこと好きだよ。だから、ちょっと江藤に妬いてた」
「何で?!」
「俺とは話さないのに 江藤とは話すから。‥‥仲良さそうだったし」

こんな展開ってアリなんだろうか?

「じゃあ、今日から野波は俺の彼女ね?」
「えっ」
「‥‥嫌なの?」
「嫌じゃないけど‥‥」
「じゃ、決定!!」

目の前の彼は にこやかに笑った。今日初めて分かったこと‥‥彼は意外と強引な人だ。

「なんか‥‥信じられない‥‥」
「何が?」
「だって、私のほうこそ 嫌われてると思ってたのに‥‥。一体いつから」

きょとんとした顔をした後、彼はさわやかな笑顔と共に私に爆弾発言をした。


「俺、一目ぼれだよ?」


「‥‥はっ?‥‥」

「だから、一目ぼれしたの。あの日 あの場所で」

彼はどうして、そういうことを照れもせずに言えるのだろうか?
思わずこっちが赤面してしまいそうになるじゃないか。

「どうしたの?顔赤いよ?」
「うるさい うるさい うるさ〜い!!」


今日から 私の指定席は、いつでも キミのトナリ。
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