初恋〜修哉の場合〜
出会いはいつも突然で、その日は気分も最悪で、きっと君は俺のことを感じの悪いやつだと思っただろう。
でも、
君と出会ったあの雨の日は、俺にとっては 忘れられない1日となったんだ。
だってその日。
俺は君に初めての恋をしたんだから‥‥。
「おはよう」
「おはようございます」
とある高校で、生徒会長なんかをやっている俺は朝っぱらから校門に立って朝の挨拶運動なんてもの行っている。
いつもいつも、生徒会長だからって何でこんなことをやらなくちゃいけないんだと思っていた。
でも、あの日からすべてが変わった。
朝ここに立てば君に会えるから、今ではここで挨拶運動をするのが楽しみでしかたがない。
ここで、毎朝君を待つ俺は 少し情けない。
君と話す機会は、きっと探せばいくつだってあるはずなのに 臆病な俺は ここで挨拶運動を装って君に話し掛ける。
君は、俺の心の中の葛藤を知っているのか知らないのか。いや、知っていてもらっては困るのだが‥‥。いつも下を向いてばかりいて、俺の方を見ようともしない。
もちろん挨拶なんて返してくれるはずもなく‥‥。
「おはよう」
「‥‥‥‥」
―――何で、挨拶してくれないんだ?
そう聞くことが出来たならどんなにいいか。
でも、出来ないのが俺なんだ。勇気が欲しいと、最近そう思うようになった。
「会長!!朝からお疲れ様です!!これ、差し入れです!!」
「え?あぁ、ありがとう」
下級生の差し入れ。もう毎朝の出来事で、驚くことは何一つない。
「お?今日は何だよ、修哉。クッキーか?」
「ん?‥‥そうみたいだな」
女の子にモテないわけじゃない。告白された経験だってそれなりにある。
でも、こんな気持ちになったのは 初めてなんだ。
初恋が高校生だなんて、正直みんな笑うかもしれない。
それでも、正真正銘 これが俺の初恋だ。
そもそも君に出会ったあの雨の日は‥‥‥
「くっそ。雨降ってきたのかよ。先生にムダに用事押し付けられるし、会長だから何でもやってくれるとでも思ってんのかよ」
と文句を言いつつ結局先生に言われた用事は断れない自分がかなりくやしい。
次第に強くなる雨。
一つため息を落として鞄を手に走り出すことを決意したその瞬間。
バシャッ!!
「‥‥‥‥」
―――‥は‥‥?
飛び散る水飛沫。
まだ、外に飛び出していないはずなのに何故か冷たい自分の体。
自分の格好を眺めてみると、茶色く濁った箇所のある夏の制服。
そしてなにより目の前で何故か倒れている女生徒。
何?もしかしてこけた?この雨で?足とられて?
そう頭で理解した途端に飛び出る特大のため息。
―――今日は厄日だ‥‥。
ただでさえ気分は最悪。
制服も汚れて気分はさらに悪くなる。
それでも、目の前でこけいるの見てみぬ振りも出来ず 仕方なく抱え起す。
「大丈夫か?」
心なしか、冷たい声音よりの呆れた声が口から出た。
もう少し優しい言い方は出来なかったのか?
と、後悔したのはそれから数時間後のこと‥‥。
「大丈夫です」
そう言って、一人 校舎に入っていく女生徒。
何故か、俺は その姿に目を奪われて 姿が見えなくなるまで ずっとそこに呆然と立ち尽くしていた。
どこに惹かれたんだ?
そんなことを聞かれても、答えられるはずがない。
自分自身、どこに惹かれたのまったく分からないのだ。
むしろこっちが教えてくれといいたい。
まぁ、答えてくれる人がいるはずもないのだが‥‥。
「おい修哉。そろそろ終わりだ、中に入るぞ」
「あぁ」
そして今日も俺の朝の楽しみが終わる。
いつになったら君は、挨拶を返してくれるだろうか?
―――‥どうせ明日も、きっと無理なんだろうな‥‥。
知らず知らずの内に漏れるため息。
どうか臆病者の俺に勇気を下さいと、願わずにはいられない朝の終わり。
***あとがき***
はい、お気づきになりましたでしょうか?
この話の題名に「〜の場合」とついていることに!!
そうです、この話は何気に実は続きます。この話が男の子視点ということは、もちろん次の話は女の子視点になるわけであって‥‥。
‥‥‥とにかく続くんです!!誰が何と言おうと続きます!!
ってことで、もう少しこの人達にお付き合いください。
2004.10.12 管理人:風花