BACK | NEXT | TOP

● 運命という輪の中で --- 第五章「想い」(1) ●

君が私に笑いかける。
ただそれだけのことが、こんなにも嬉しいなんて、知らなかった。

**********

あの日以来、私は津川と普通に話せるようになった。
突然変わった津川の態度に、同じクラスの人達はビックリしていた。あと 私も、最初のほうは、なかなか慣れなくて、うれしいんだけど‥‥‥少し変な感じがした。


『よかったね』

『よかったじゃない』


美和と明日香に改めてそう言われたとき、不覚にもまた涙がこぼれそうになった。

『ありがとう』

あの日は嬉しくて嬉しくて、妙に興奮して 夜、なかなか寝付けなかった


でも、次の日に学校に行ったら アレは夢で、また 津川の冷たい目を見続けなければいけないんじゃないかと、悪い方にばかり考えていた。だから、教室に入って‥‥

『おはよう』

そう言われたときは、ものスゴク嬉しくて、夢じゃないんだって確認できて、例によって また 涙がこぼれそうになったのは言うまでも無い。

**********

「―――‥‥クシュッ」

2・3日前から、ちょっと調子が悪い。たぶん風邪なんだと思うけど‥‥。

「休むほどでもないよねぇ〜」

「沙和〜?何?風邪ひいたの?」
「んー。そうみたい」
「めずらしいね。沙和が風邪ひくなんて」
「だよね」


「何だよ、明智。風邪ひいたのか?」


いつの間にか目の前まで来ていた津川が、話し掛けてきた。

「うん。風邪っぽい」
「大丈夫なのか?」
「うん。今の所はね」
「そっか。まぁ、気をつけろよ」
「うん。ありがとう」

優しく微笑んだ津川は、ポンポンと2回ほど私の頭を軽く叩いたあと 自分の席へと戻っていった。

夢じゃない。その事実が今、どうしようもなく嬉しい。

BACK | NEXT | TOP
Copyright (c) 2004 huuka All rights reserved.
 


100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!