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● 運命という輪の中で --- 第四章「涙」(4) ●

あの日 初めて見た君の涙を‥‥‥
俺は 一生‥‥‥忘れない‥‥‥。

**********

やっと、やっと明智に謝ることが出来て、ホッとしたのもつかの間、目の前でいっこうに泣き止む気配を見せない明知の涙を相手に、一体どうしたものかと悩む羽目になってしまった。

「‥‥明智?もう 泣き止めって、な?」
「‥‥‥っ‥‥とっ‥‥」
「と?」
「‥‥止‥‥まら‥‥ないッ‥だも‥」
「‥‥‥‥‥」

う〜ん。俺としては、泣き出したことも予想外の展開だった。ここまで明知が泣くっていうのにも、俺はかなり驚いた。‥‥それだけ、俺は明智を傷つけてたってことか?なら、もう一回くらい謝ったほうがいいだろうか?

「なぁ、明智。ゴメンな?俺が本当に悪かった。だからな?もう 泣くなよ、な?泣きはらした顔でみんなの前でるの嫌だろ?」
「‥‥‥そうだね」

そう言って 明智は、あふれ出る涙を手でぬぐって、笑って見せた。それを見て、俺はやっと少しホッとする。

「ゴメンな。今までホント‥‥‥悪かったよ」
「もう謝らなくて良いよ!!私は‥‥別に、謝って欲しかったわけじゃないもん」
「え‥‥?」
「ただ、少しで良いから‥‥仲良くしたいなぁ、って思ってただけだよ」
「‥‥‥ゴメン」
「だっだから!!もう 謝らないでよ!!それ以上謝られたら、また‥‥涙が出てくるよ‥‥」
「げっっ。それは困る」
「げっっ。て、何気なく酷くない?そりゃあ あれだけ泣かれればウザイかもしれないけど‥‥」
「あぁ〜〜。違う違う。俺‥‥苦手なんだよ、涙見んの‥‥。だってさ、人って悲しいときとかよく泣くだろ?見ていて辛くなるんだよ」

チラッと明智の方を見てみると、涙は完璧に止まっていて、いつも通りの明智に戻りつつあった。

「そっか‥‥。でもね、津川。私は今日、悲しくて泣いたんじゃないよ?」

目の前の明智は、うっすら口元に笑みを浮かべてほんわかした口調で話し出した。

「‥‥嬉しくて、嬉しすぎて、思わず 涙が出ちゃったんだよ?」
「‥‥‥‥‥」
「ねぇ、津川。‥‥‥これからは、仲良くなれるよね?私達‥‥」
「あぁ」
「‥‥‥ありがとう」

そう言って 笑った明智は、大きく深呼吸をした。

「ハァ〜。じゃぁ、私 先に戻ってるね!!」
「えっ?あぁ、分かった」
「うん。じゃあ、あとでね」

そして校舎内へと消えていく明智の後姿を眺めながら 俺は、もっと早くに謝っておけばよかったなぁと、しみじみ考えていた。


俺は ずっと、きっかけを探してたんだ。‥‥明智に謝るきっかけを‥‥。

第四章「涙」(完)
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