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● 不器用な私達 --- 2 ●

「よ〜し!今日はここまで!!」

張りのあるよく通る声が、体育館に響き渡り部活動の終わりを告げた。

「整列!!」

顧問の声を聞き、続けて部長が部員を整列させる。この時は、男女一緒に並ぶことになっている。

「礼!!」

その声を合図に、男女合わせて45人程度の部員が一斉に頭を下げて礼をする。

「ありがとうございました!!」

男子の声が物凄く大きくて、女子の声はいつもかすんでしまう。

「ありがとうございました。じゃあ、気をつけて帰れよ〜」
「は〜い。さようなら〜」

最後に適当にあいさつを交わして、みんなは色んな方向に散っていった。

「ふぅ〜。おつかれ〜」
「おつかれ〜」

練習が終わり、一番最初に声をかけてきたのは奈津美だった。額には汗がキラリと光輝いていた。

―――青春だねぇ〜。

しみじみそう思っていると、向こうの方から鈴花が駆けて来た。

「みんなおつかれ〜。ねぇ、今日帰りどこかに寄っていかない?」
「ん〜?私はいいけど?ちょうどお腹減ってるし」
「愛里は?」

奈津美が先に返事をし、少し返事しづらくなってしまった。困った顔が出ていたのか、鈴花が少し残念そうな顔をして「ダメなのか」と呟いた。

「う〜。ゴメン。また、今度は行くからさ」
「うん。じゃあ、今度はみんなで行こうね」
「うん」
「それじゃ、先に帰るね」
「バイバ〜イ!」
「バイバーイ!!」

軽やかな足取りで、ウキウキしながら帰っていく奈津美を見ながら、やっぱり私も行けばよかったかなぁ〜。と今更ながらに後悔した。
でも‥‥、行けない理由‥‥行きたくない理由がある。


「ハル〜。今日も悪いな!!今度は手伝うからさ!!」
「いいっすよ。後片付けくらい」
「でも、お前エースなんだからな?万が一お前に何かあったらこのバスケ部は終わりなんだぞ?」
「大丈夫っすよ。こう見えても俺、結構丈夫だし ケンカも強い方だと思いますから」
「そういうことじゃなくてだなぁ〜。‥‥まぁ、いいや。とにかく気を付けて帰れよ?健康管理もしっかりな!!試合の日に風邪ひくなんてことになったら洒落にもならないんだからな!?」
「分かってますって」

最後まで残っていた先輩を見送ったハルは、クルリと私の方に向き直った。

「おいこら。お前今日も残ってんのかよ‥‥」

少し呆れ顔で私を見るハルは、私の一番好きなハルだった。バスケをしてるハルも好きだけど、天才なんて呼ばれてるハルは‥‥あまり好きじゃない。

「ダメなの?」
「‥‥別に、いいけどさ‥‥」

バスケットボールを抱えて、ハルはコートの真ん中に向かって歩き始めた。その間、「くそっ。よりによって愛里にバレるとはなぁ。しくじった‥‥」とボソボソ独り言を言っているのが聞こえた。

しばらくすると、小気味のいいボールの音が私とハルしかいないこの体育館の中で響き始めた。


あれは本当に偶然だった。
あの日、体育館で一人、自主トレに励むハルを見つけたのは‥‥。

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