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● 運命という輪の中で --- 第一章「出会い」(2) ●

運命の出会い。
それが本当にあるものだとしても、
運命だと気づける人は、きっといないと俺は思う。

**********

半年前とあまり変わらない景色の中に俺はいた。季節は夏。

「冬だったのになぁ」

俺は、中学3年の冬にドイツに行った。卒業式は日本でしたかったけど、まぁそういうわけにもいかず、用事が済めばすぐこっちに戻ってくるという条件でドイツに行ったのだった。

「渓士ー!!」

こちらに向かって走ってくる人を見て、俺は自然と笑顔になった。

「和臣!!」

和臣というのは、小学校からの友達で大親友だ。

「渓士。元気にしてたか?やっと戻ってこれたんだな」
「ああ。お前こそ元気にしてたのか?」
「もちろん。もうすぐサマーフェスティバルだしな。ちょうどにぎやかな時に帰ってきたよ、お前は」
「へぇ。もうすぐサマーフェスティバルなのか」
「確か渓士も6組だよな?俺も6組なんだぜ」
「そうか。また一緒なんだな」

和臣と一緒のクラスだということを知り、俺の少しだけあった不安はきれいさっぱり消え去った。

**********

「そういえば和臣。お前授業どうしたんだよ?」
「は?あぁ、そっかそっかお前知らないんだよな。今、準備してるんだよ。だから、俺一人ぐらい抜けても平気。‥‥‥‥多分」
「?何だよ、多分って。‥‥‥自信ないのか?」
「いや〜。平気なのは平気なんだけど、あいつらがなぁ〜」
「あいつら?」
「そう。明智っていう双子」
「双子?そんな奴いたか?」
「外部生だよ。今年の」
「ふ〜ん」

双子の外部生に少し興味を持ったが、別に仲良くなりたいとも思わないからすぐ忘れた。

「ああ〜!!関〜!!あんたどこ行ってたのよ〜!!力仕事を女の子にまかせるなんて最低〜!!」
「えっ?あっうわっ。落ち着け明智。んなもん投げるな〜!!」
「?」

叫び声が聞こえてきたと思って後ろを向くと、和臣がしゃがみこむ姿が見えた。
そして、その先に見えたものは、青いペンキの缶だった。

「あっっ」
「渓士!!」

予想外の展開に驚きを隠せなかったであろう明智(?)という奴の声と、和臣が叫んだ俺の名前を最後に、俺は意識を手放した。

**********

「ゴメンゴメンゴメンゴメン!!本当にゴメン!!関を狙ったつもりが、関はよけちゃうし‥‥‥前に人がいるなんて知らなくて‥‥‥」
「いいよ別に‥‥‥ちょっと当たり所が悪かっただけだし」

明智(?)の投げた缶は、見事に俺の頭に命中し、不覚にも俺は意識を失うという事態におちいったのだ。

「うっ。だっだから、ゴメンね?本当にゴメン」
「‥‥‥‥」
「明智。とりあえず、ペンキもう一度もらって来いよ」
「あっそうか。本当にゴメン。関もゴメン。本気で投げるつもりなんてなくってって、投げたあとで何言っても遅いけど‥‥‥‥。とっとりあえず、あとよろしく。今日はもう帰っていいよ。美和には私から言っとくから」
「いいって、ちゃんとあとで行く。お前もそんな気にすんな」
「うん。ありがとう!!」

そして、明智(?)は出て行った。最後に満面の笑みを浮かべて‥‥‥。

「渓士。さっきのが明智沙和。双子の妹の方」
「‥‥‥‥」
「‥‥‥まっまぁ、そんな怒んなよ。なっ?悪い奴じゃないからさ」
「別に、怒ってなんかない」

和臣にはそう言ったけど、俺にとっての明智の第一印象は最悪だった。
そして、俺の嫌いなタイプの部類に、いとも簡単に入ることが出来たのだ。
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