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● 運命という輪の中で --- 第二章「夏祭り」(3) ●

心の中の空白の部分。
それは、誰もが持ってる孤独感。

**********

7月20日。サマーフェスティバル当日。
チラシの効果なのか、そうじゃないのか自分で判断することは出来ないが、とりあえず大盛況。

「すごい人だね〜。沙和すごいじゃん」
「なんで?」
「何でって、これってチラシの効果でしょ」
「そうかなぁ?」
「そうだよ!!」

本当にチラシの効果だとしたら、嬉しいな。今まで私のしてきたことが、無駄じゃなかったということになるから。ずっとずっと津川には、嫌味言われっぱなしだし‥‥‥‥‥。

「な〜に暗い顔してるのよ?」
「美和‥‥‥」
「ちょっとは笑ったら?さっきからずっと暗い顔ばっかり」
「そんなこと‥‥‥」
「そんなことあるでしょ?」

そう言って美和は、少し困ったように笑った。

「ねぇ沙和。今、沙和の心の中をしめているものが何なのかは分からない。
でもね、今日この時間にこの場所で、これだけのお客さんに囲まれて、この行事を成功させることが出来たのは、おせじでも同情でもなくて、沙和のおかげだと思うよ。
だって気づいてる?ほとんどの人が、沙和の作ったチラシを持ってるんだよ?」
「え‥‥‥?」

驚いて美和の顔を見てみると、さっきの困ったような笑顔じゃなくて、ただただ優しい笑みを浮かべていた。
そして、ふと私は、今まで見ていなかった周囲の人達を見てみることにした。

「あっ」

お客さんのほとんどは、美和の言ったように私の作ったチラシを持っていた。それに気づいた私は、今までしてきたことは無駄じゃなかったんだということが確信できて、少し気持ちが和らいだ。
その時、私の視界のはしに、小学生くらいの女の子が入ってきた。

「お姉ちゃん!!」

その女の子はとびっきりの笑顔を私に見せてくれた。そして、その女の子には見覚えがあった。

「ナナちゃん?来てくれたの?わぁ〜ありがとう!!」

暑い暑い夏の空の下で、一生懸命私の話を聞いてくれた女の子がこのナナちゃんだった。十分ぐらいの会話の中で、私とナナちゃんはかなり仲良くなったのだ。

「あのね。お母さんにお姉ちゃんのことお話して、今日連れてきてもらったの!!」
「そっかぁ〜。じゃあ、お母さんと楽しんでいってね?お姉ちゃんもお仕事頑張るから!!」
「うん!!頑張ってね!!じゃあ、またね〜お姉ちゃん」
「バイバ〜イ」
「私達も行こっか?沙和、明日香」
「うん」
「そだね」

**********

ナナちゃんが来てくれてから、私の暗かった顔はすかっり晴れてしまった。
そして、たまたま通りかかった、たこ焼きの屋台の前で津川を見つけた。津川は相変わらず人気者で、男女問わず大勢の友達に囲まれていた。もちろん津川の顔は、私には絶対に見せないような優しい優しい笑顔だった。

「沙〜和?どうかした?」

突然黙りこんだ私の顔を心配そうにのぞきこんできた明日香に、私は笑いながら言った。

「ううん。何でもない!!さっ、行こ!!」
「え?う、うん。でも、本当に大丈夫?」
「大丈夫!大丈夫!一体何の心配してるんだか。さっ早く行こ!ぼけぼけしてないで、ほら美和も!!せっかくのお祭りなんだから、楽しまなくっちゃ!!」


楽しい夏祭り。
でも、少しだけ悲しい気がするのは、どうしてだろう?
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