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● 運命という輪の中で --- 第二章「夏祭り」(4) ●

言葉は、自分の想いを伝えるためにある。
でも俺は、言葉を使いこなすことが出来ていない。

**********

人、人、人、人の海。
一体何処からこれだけの人数が集まったんだ?と思うくらい、たくさんの客が集まっていた。

「暇な奴ら‥‥‥」

俺の前を行き交う人の手には、今まで何度も目にしてきた明智のチラシ。
ここに集まった大半の客は、明智の作ったチラシを手にしているのかと思うと、明智のあの苦労は無駄じゃなかったんだと改めて確信した。

「渓士!!何してんだ?」
「ん?‥‥何だ和臣か‥」
「何だとは何だよ。失礼な奴だな」
「まぁ怒んなって」
「で、お前こんな所で何やってんだよ。休憩中だろ?どっか行かないのか?」
「行くよ。行くけど‥‥‥すごい人だなぁと思ってさ‥‥」
「あぁ、今年は凄い客入りらしいぜ。今までで最高だってさ。ホントよくやったよなぁ、明智」
「‥‥‥あぁ」

今までで最高の客入り。もちろん明智のチラシの効果で、この結果が生まれたのだろう。

「そういやぁさ、渓士アレ食ったか?たこ焼き」
「たこ焼き?‥‥いや、まだだけど‥?」
「んじゃあ、食いに行こうぜ!!結構おいしんだってさ」
「へェ〜」

やたらテンションの高い和臣に連れられて、俺はたこ焼きを食べに行くことになった。

**********

「おっ?渓士じゃねぇか?」

たこ焼きの屋台の前まで来ると、突然誰かに話し掛けられた。

「えっ?‥‥‥‥なんだよ、たこ焼きやってるのって大輝のクラスかよ」
「なんだなんだ?もしかして、食べに来てくれたのか?よし!!そんなお前達には大サービスだ!!」

俺と和臣、そして大輝のクラスメートが見ているなか、大輝は腰に手をあてて自信たっぷりに言った。大サービスと聞いて、おまけをつけてくれるとか、ちょっと安くしてくれるを予想していた俺達だが、大輝がそんな気前のいいことをしてくれるはずがなかった。

「特別価格、たこ焼き8コ入りを【800円】でどうだ!!」
「通常価格の二倍じゃねぇーか!!どこが大サービスだよ!!」
「そんな細かいことは気にするな。だから身長伸びないんだぜ?か・ず・お・み」
「うるさい!!俺の身長は普通サイズなんだ!だから別に伸びなくてもいいんだよ!!」
「嘘つくなって。羨ましいんだろ?ホントは」
「うるさーい!!お前と比べるな!!お前は規格サイズ外なんだ!!」
「ひがむなひがむな」
「ひがんでない!!」

俺はそんな二人のやりとりを笑いながら聞いていた。そして視界の端では、たまたま通りかかった明智の姿をとらえていた。
サマーフェスティバルが成功したのは、誰がなんと言っても、明智の力があってこそだと思う。だからこそ、あいつのがんばりを認めてやるべきなんだと思う。
でも、俺の口からは、明智を認めてやる言葉は出てこなかった。

第二章「夏祭り」(完)
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