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● 運命という輪の中で --- 第四章「涙」(1) ●

誰かが言った。
君の涙には、優しさが詰まってるんだと。

**********

長かった夏休みも終わり、やっと二学期が始まった。
嫌だ嫌だと叫んでいる生徒もいるが、私にしてみれば 夏休みのほうが、嫌だ嫌だの連続だった。

「おはよう!!沙和!!」
「おはよう!!」

夏休みでよかったと思えた唯一のことは、津川の冷たい目、言葉と向き合わずに済んだことかもしれない。

「沙ー和!!」

突然 背後から誰かに飛びつかれて、思わず私は 前のめりに倒れそうになる。そこをすんでのところでこらえて、後ろを振り返った。

「―――‥‥何だ、明日香かぁ〜」

後ろから私に飛びついている人物は明日香だった。その明日香の顔は、泣きそうで泣かない、何とも言えない 微妙な顔をしていた。

「‥‥‥どうしたの‥?」
「明日香ぁ〜。明日 発表なんだって〜」
「明日?何が?」
「何がって‥‥。この前した実力考査の結果でしょ〜」
「あぁ」
「う〜。何よ何よ、今回も余裕なんでしょ!!もう、沙和の頭 少しでいいから分けて欲しいよ」
「また今度教えてあげるって。ね?」
「‥‥‥うん」

テストが終わると、たいてい私は明日香をなだめてる。もう毎回のことだから、すっかり慣れちゃった。

「お前、人に教えられるほど勉強出来んのかよ」

お約束になってきた、こういう類の言葉。少しずつだけど、慣れてきた気がする。でも、そんな気がしてきてる自分がまた悲しい。

「でもまぁ、生徒会に入れるくらいだもんな。ある程度は頭良くないと格好がつかないよな」
「ちょっと津川。そりゃ津川には負けるかもしれないけど、沙和は―――」

津川に反論しようとする明日香を小声で止める。

「いいよ、明日香」
「でもぉ〜」
「言いたいことの続きがあるなら聞くけど?」
「別に‥‥ない‥‥」
「あっそ」

それだけ言うと、津川はさっさと教室の中に入ってしまった。津川の後姿を見送りながら、目頭が熱くなるのを必死で堪えた。津川の言葉に慣れてきたのは本当だ。けど、それは自分の勝手な思い込みで、心の一番敏感なところでは、毎回毎回傷付いているのだ。

どうしてかな?最近、‥‥泣きたくなることが たくさんある。

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