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● 運命という輪の中で --- 第四章「涙」(2) ●

気付いてからでは もう 遅い。
人はいつでも、過ちを起してから気づくのだ。

**********

新学期早々、俺はまたやってしまった。
サマーフェティバルが終わってから、明智に対する態度を改めようと思っていた。改めるつもりだった。でも、やっぱり 俺には無理だった。
明智の顔を見ると、開きたくもない口が勝手に開いてしまうのだ。もちろん開いた口からは、明智を傷つけるような言葉が出てくる。

「渓士!!お前やっぱりすごいなぁ」
「ん?」

俺の肩に手を置いて 話し掛けてきたのは和臣だった。

「何の話だよ」
「実力考査の順位だよ」
「もう 張り出されてんのか?」
「あぁ、さっき見てきた。中学のときに引き続き、やっぱりお前はトップだったよ」
「ふ〜ん」
「ふ〜んって‥‥‥」

これは はっきり言って自慢だ。俺は中学のときから、順位はトップしかとったことがない。まぁ、自慢といっても 自分で順位をいろんな人に教えたりするんじゃないんだけど‥‥‥。

「まぁいいや、とりあえず見に行こうぜ。渓士」
「‥‥‥そうだな」

**********

廊下に張り出された順位表を見て、俺はただ呆然と突っ立っていた。

「‥‥‥‥‥」
「どうかしたのか?」
「いや‥‥‥。明智って‥‥両方共頭良いんだな」

一、1−6 津川 渓士 696/700
二、1−6 明智 美和 688/700
三、1−6 明智 沙和 682/700
四、1−2 松岡 陽介 679/700

生徒会に入るくらいだから、ある程度は勉強出来るだろうと思っていた。でも、まさか ここまでとは、夢にも思っていなかった。

「あぁ。あいつらは頭良いぜ。なんか中学のときも上位5位から落ちたことないって瀬戸が言ってたし」
「瀬戸が‥‥?」
「あぁ、瀬戸って転校してきただろ?転校する前は、明智達と同じ学校だったんだってよ」
「ふ〜ん」

この時の俺は、明智の成績に気を取られて、瀬戸と明智が同じ中学に通っていたことに何の疑問も浮かんでこなかった。
中学の時に、瀬戸は県内に引っ越したんじゃない。県外に引っ越したんだ。この高校は、瀬戸が住んでいた県からは あまりにも離れすぎている。疑問に思うべきだった。
明智達がわざわざ 遠い見知らぬ土地の高校を受験した理由を‥‥‥。
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